monologue

by 加ノン様

 

 

 

 

 

「すまない、諒」
「ああ、わかってるさ。」

無抵抗なまま身を横たえたオレに総一郎が覆いかぶさる。
赤く輝くこの瞳は、総一郎のヒトならざるものの血を、力をことさら強く感じさせる。
性急な動作でオレのシャツのボタンをはずし、胸をはだけさせ、欲望のまま、少しかさついた唇が這いまわる。

「あ、痕はつけないでくれよ。」

無駄だと思うが一応頼んでおく。
人に見られて困るというのもあるが、やはり自分で見た時に悲しいからだ。
この身に刻まれた総一郎の所有のしるし、オレ達がつながっていたという証を一人で見るのはとても虚しいものだから。

「あ…んっ、総一郎。」

甘えるようなねだるような声を出してもオレを見てくれないのはわかってる。
でも一時だけでも愛されているような錯覚に陥りたい。
総一郎は暁人という最高の贄を今にも喰らい尽くしてしまいたい衝動を強く持っている。
しかし幼く穢れの無い暁人を喰らう訳にはいかない。
総一郎はこの大きな葛藤に苦しんでいる。
その強さはオレには想像すらかなわないが、だが彼が苦しんでいることはわかる。
だからオレはこの身を差し出して、総一郎の渇きを癒す。
総一郎はしばし満たされて葛藤から解放される。
こうしてオレ達3人は幸せに暮らしてゆけるのだ。
総一郎がオレを抱くのは、暁人のため。
オレが総一郎に抱かれるのも暁人のため。
二人の間に愛など無いはずだった。


最初はそうだった。暁人のためと割り切っていた。
しかし貪欲なオレはいつしか体だけのつながりに愛を求めるようになった。
でもこれは総一郎には秘密のことだ。
何故ならば、彼には暁人しか見えていないし、暁人しか見ようとしないのだから。
拒まれて惨めな思いをするくらいなら、いっそオレの心の中だけに秘めておいた方がいい。
だからこっそり心の中で、行為の最中は彼の恋人になりきるのだ。
荒い息づかいの中に甘い睦言を聞き取り、穿たれる楔の律動一つ一つを彼の愛と読み取る。
虚しいことだがこれ以上オレに何ができるというのだろう。


情事の後の荒い呼吸も収まらないうちに、暁人のことを楽しげに話す総一郎に、オレは現実に引き戻される。
そして、世界で一番大事な想い人のことを話すようなその様子に思い知らされる。
総一郎が大切に思うのは暁人ただ一人。
暁人を傷付けないために彼は今ここでこうしているだけであって、それ以上でもそれ以下でもない。
この腕が今抱きしめているのはオレであっても、その心が愛おしんでいるのは暁人なのだ。


総一郎が帰った後の部屋で一人物思いに沈んでいると不意に涙がこぼれた。
『体だけの関係』―そんな言葉をかみしめながらオレは深い眠りに落ちた。

 

 

finis

こーな様のステキな兄×諒イラストを見て出来上がった妄想世界でした。

 


 

諒の気持ちが痛かったお話です。
わかっていてもどうしようもない。
自分の気持ちを抑えることでしか続けられない。
けれど、それがどれだけ自分自信を傷つけているのかわからないまま身体を重ねていくしかないふたり…。

こーな様との連名で頂いたお話ですが、皆様にも読んで頂きたくて掲載させていただきました。

加ノン様が妄想されたこーな様のイラストはこちらですv

 

 

■ 兄×諒 ■
































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